ある教員の離任式での挨拶
2015/06/20
前回、教員の異動についてお話した。
私の住んでいる地域では、離任式は4月に行われる。異動した教員との最後のお別れになるので、児童生徒にとっても異動した教員にとっても、ちょっぴり切ないのが離任式だ。
中学生の頃、離任式でとても印象深い挨拶をした先生がいた。他の先生方が学校での思い出や新しい学校での意気込みを語ったり、生徒達を激励したりする中、その先生は自分の番になると、突然校歌を歌い出した。かなりびっくりしたが、先生は大声で歌い続け、途中で泣き始めた。
歌い終わると
「僕は学生時代、いくつかの校歌を歌ってきました。でも今の僕にとっての校歌は、この○○中学校の校歌です。新しい学校に行っても、この先どんなにたくさんの学校に行くことになっても、僕の校歌はこの○○中学校の校歌です。皆、毎日朝ごはんをしっかり食べて、元気に学校に通ってください。」
この日の中で最も短く、最もインパクトがあり、最も感動的な挨拶だった。小学校からの友達で一学年上にいた子も、この先生の挨拶にはクラス中が号泣だったと言っていた。
この先生は、大学を卒業して初めての赴任先であるこの学校に、とても愛着を持っていたのだ。若くて面白く、生徒思いの先生だったので、生徒達にも大変人気があったそうだ。
そう、「あったそうだ」…その時私は一年生だったので、この先生を知らなかったのだ。感動的な挨拶ではあったが、私達一年生は泣きじゃくる二三年生から取り残されたように、皆揃ってポカーンとしていた。
4月の離任式は、異動した教員との思い出いっぱいの二三年生と、入学したての一年生の温度差が激しい行事でもある。